タイコのダン |
1746年の初夏、紀州と泉州の境目で水利権を争っていた。 泉州の庄屋の藤原誉茂太郎は紀州側と交渉をしたが、うまくいかず、最後の手段に腹を掻き切りはらわたを相手側に投げつけた。紀州方は心意気に恐れて水利権から手を引き、誉茂太郎をひそかに埋葬した。 誉茂太郎がなかなか帰ってこないことを気にしていた村人たちは不思議な土饅頭を発見した。 その上にのると太鼓のような音がするので「タイコのダン」と名付けた。 その後そこから誉茂太郎の死体が発見され、感謝した村人は葬式を行い記念碑を建てた。 その付近の蝉はカンカン(肝)と鳴くらしい。ワラビには誉茂太郎にそっくりの髭が生えるため、誉茂太郎の魂が宿っていると考える地元の人は採らないそうだ。 |
金熊寺奥のつづら畑という部落に記念碑がある。 |
『泉州むかし話(第一集)』 |
泣く仏像 |
昔、五郎吉という鍛冶屋が仏像を盗み売って儲けていた。 ある日海会寺から仏像を盗み出した。五郎吉は家の中に仏像を隠していたが、その家の前を通りがかった長者には不思議な泣き声が聞こえた。 長者は声の主を助けようと思い、家に押し入り声の聞こえる箱を開けると仏像が入っている。 五郎吉には声が聞こえず開き直っていたが、問い詰められ犯罪を白状した。長者に諭され改心した五郎吉はまじめに働くようになった。 「日本霊異記」にも載っている古い話。 |
海会寺跡が公園になっている。古代史博物館 |
『泉州むかし話(第一集)』 |
鬼のかかし |
林昌寺の法海上人が自分を助けてくれた地蔵様に恩返しをするため、立派な地蔵堂を建てようとした。 しかし高価な漆が手に入らない。法海は村人と考えた挙句、はぜの木を育て漆を作ることにした。 しかし、ようやく実が生りだしたころ泥棒に盗まれ、困った村役は鬼のかかしを立てたが、それでも実が盗まれた。 ところが鬼のかかしが動き、泥棒を捕まえてくれた。 こうして無事に地蔵堂を作ることができた。 |
林昌寺(鬼木田地蔵) |
『泉州むかし話(第二集)』 |
小板屋小十郎狐 |
泉南の馬場の狐のボス小十郎は材木問屋を騙し大金を手に入れた。しかし、怒った材木問屋から逃れるためお伊勢参りの旅に出た。 その道中景気よく金をばら撒いていたがやがて足りなくなり木の葉をお金に変えていた。 しかし、旅籠の主たちは相談し合い宇治山田の二見屋という旅籠で狐にとっては毒のネズミのてんぷらを食べさせ小十郎一行は息絶えた。 そのことを風の便りに聞いた馬場の人たちは葬式をし極楽密寺に「小板屋大名神」として祭った。 |
極楽密寺境内、最寄り駅はJR和泉砂川 |
『泉州むかし話(第三集)』 |
蛇王姫 |
1820年ごろ長慶寺の側の大きな池に雌の大蛇が大勢の家来とともに住んでいた。その名を蛇王姫という。 その当時長慶寺には鐘山和尚がおり、美男子であった。 懸想した蛇王姫は道に迷った娘を装い鐘山に迫るが、鐘山和尚に刀で切り付けられ真っ二つにされてしまう。 反省した蛇王姫は死の間際、これからも長慶寺を守っていく、そこで自分の姿を本堂の天井に描いて欲しいと頼み息絶えた。 鐘山和尚はさっそく天井に絵を描きその絵は今でも残っている。 蛇王姫の池は今では団地になっている。 |
長慶寺(現在橋が工事中なので駅前を通ってしか行けない。) |
『泉州むかし話(第五集)』 |
おさく狐 |
白狐のおさくは子供を殺された復讐に、男の恋人に化け、男を腹上死させた。 |
一丘神社付近 |
『泉州むかし話(第五集)』 |
大ムカデ |
昔新家の中村に大きな桃の木がある家があり、忠左衛門という百姓の一家が暮らしていた。その根元には30cm程もある巨大なムカデがすんでいた。家のものはそれを守り神とし、供物を奉げていた。 ある日、親戚の病気に一家総出で出かけることになったが、その間ムカデの世話をする人がいない。そこで使用人の一人にムカデの世話を頼み出かけていった。 しかし使用人は誤ってムカデを殺してしまった。使用人は困ってしまったが、忠左衛門は帰りの船が難破して全員死んでしまう。その二ヶ月ほど後、使用人の家は嵐のため崩壊し、死んでしまった。 |
新家駅付近 |
『泉州むかし話(第五集)』 |
火の玉の逢引 |
千代という娘と良作という若者は将来を約束した恋人同士だった。 しかし、良作が逢引に来なくなる。そこで千代が良作の家に行くと婚礼の途中だった。 千代は発狂して家に火をつけた。そのため男は死に、娘は磔となった。 その後千代の恨みか火の玉が出るようになる。 ある日庄屋が火の玉を退治しようと 刀で切りつけるが二つに分かれ、また一つに戻った。その後庄屋は原因不明の病で亡くなった。 二つの火の玉が逢引をし、一つのようになっていたらしい。 |
兎田(新家と長滝の間あたり) |
『泉州むかし話(第五集)』 |