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月岡芳年について

奥州安達ヶ原ひとつ家の図

 月岡芳年は「血みどろ絵」で有名である。

 夏目漱石が絵を買ったが怖くなって手放した話や、自殺する前に眺めていたなど、なんだか物騒な話ばかりが先行する。

 私が初めて芳年に惚れたのは『奥州安達ヶ原ひとつ家の図』だ。

 吊るされた妊婦の生命感溢れる、豊満な白い腹に血を連想させる赤い腰巻。

 赤を引き立てる暗い。天井さらに鮮やかな赤のバランスを取るためか抑えた緑の糸瓜を覗かせる。

 それに対して枯れた老婆の茶色を後ろの青い布、桶の水が際立たせている。見事な配色と構図だ。題材の凄惨さを忘れさせるような美しい絵だと感じた。

 芳年は写生を大切にしていたが、この絵は芳年の想像力を駆使して描かれたものだ。

 予断だが、伊藤晴雨という責め絵(主に女性を縛った絵)で有名な絵師がこの絵を見、芳年が本当に妊婦を吊るしたか気になり、奥さんの勧めで、妊娠中の妻を吊るして実験した。その結果、おかしな点があったため、写生はしていないということが判明した。その後、芳年の弟子にこのことを話すと、弟子は師匠がその写真を見たら大変喜ぶだろうと答えたそうだ。

 この絵から入った私だが、芳年の絵はまだ以前の浮世絵の雰囲気が強い「血みどろ絵」はそれほど好きではない。芳年は他に「武者絵」が有名である。こちらの方が好きだ。

 武者絵のポーズは歌舞伎のポーズを思わせやや不自然なのだがかっこよく感じる。

 『魯智深爛酔打壊五台金剛神之図』は水滸伝の豪傑の一人魯智深を描いているが、均整の取れた肉体に美しい刺青、威嚇するかのような仁王像など非常にかっこいい。芳年の描く男はかっこいいのだ。若い女性はあまり好みじゃないが。

 だが私は芳年の絵の中でどこに一番惹かれるかといえば「静」を感じるところだ。

大物海上月

 『月百姿』のシリーズがその傾向が強いように感じる。例えば、このシリーズに「大物海上月」がある。波は荒々しく非常に躍動感あふれる画面にかかわらず、「静」を感じる。激しい時間の中の一瞬を描いているかのように感じるのだ。こういうのを「幽玄」とでもいうのだろう。

 『月百姿』私はこれが一番好きだ。静けさと冷たさと切なさとそしてほのかな温かみを感じる。

 『月百姿』は月の狂気を表していると考えられているようだが、私は狂気よりも、月のやさしい光を感じる。場面がどんなに凄惨であっても、月は優しく静かに見守っているようだ。「月のかつら」などはほのぼのとした感じがする。

 私はなんとなく芳年は狂気の人というよりも、もっと温かみのある人だったのではないかと思っている。

月のかつら

 芳年は弟子に厳しいが同時に大変かわいがり、これからは洋画の時代だと見越し、何人もの弟子を洋画家に弟子入りさせている。そのため彼の弟子に大成した人は少なくない。

 涙もろい人情家でもあり、円長の人情話を聞いてすすり泣いたという話もある。

 絵のモデルのために弟子を縛り付けて、それを見た知人が驚いて、助けてやってくれと頼むと、こいつは悪いことをしたので縛り付けていると悪乗りをして言い返すユーモラスな人でもあったようだ。

さらににぎやかなお祭り好きで、話し上手でもあった。

 精神病を患っていたが、それでも病の床で絵を描き続けた。絵の道にひたむきな姿勢を持つ。

 本当のところは分からないが、病と戦いながらも逞しく生きた人ではないかと感じるのだ。





 話は変わるが現在、京都の町を歩いていると浮世絵屋が所々にある。主に外国人が買っていくようだ。

 比較的新しく摺られたものは安いらしく、芳年の絵も結構あるのだが大体一万円から買える。いつか一枚買ってみたいと思っているが、どれを買うかですごく悩む。でも、ものによっては五万円ぐらいしたりする。

 他にも色んな作品があるし、昭和に摺られたものなら五千円ぐらいであったりする。版画を買うよりお勧め。


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